唯一無二のひと



「…すいません…ヨーグルトなら、
さっき食べさせちゃったんです…」


秋菜がおずおずと言うと、明美は三白眼の目でジロリと見て、不機嫌な顔をする。


「あらあ。何よ。
せっかく買ってきたのに」


「すみません…
でも、食べすぎちゃうとちょっと…
すぐお腹に来ちゃうんで〜」


こんな時、実の母親だったら、もっときつい口調で言い返すのに。

下痢でもしたら大変なのは、こっちだ。


「あ、そう。柊ちゃん、ママがダメだって!」


明美は頬を膨らませ、ヨーグルトを乱暴に冷蔵庫にしまった。あまり好きではないプレーン味だったので柊は、あっさり諦めて泣かなかった。


子供の好きな明美は、甥の豪太の息子、柊を孫のように可愛がってくれる。


柊が生まれてから、ひんぱんにこの家を訪れ、菓子やら小さなおもちゃなど届けてくれるようになった。



悪い人ではないのは分かっている。

けれども、秋菜はこのデリカシーのない伯母が苦手だった。



< 7 / 99 >

この作品をシェア

pagetop