唯一無二のひと


前に部屋の奥で干していた洗濯物を、
チェックされたこともあった。


『今の若い人の下着は派手で嫌ねえ。
子供がいようがお構いなし。
どういうつもりなのかしら。
こっちが恥ずかしくなっちゃう』



ちょうど、家干ししていた洗濯ハンガーの衣類の中に、秋菜の光沢のあるピンクに黒いレースのついたショーツがぶら下がっていた。

子供が、というフレーズで秋菜への当てこすりだとわかる。




それでも、明美には感謝しなければならなかった。


秋菜と豪太のささやかな結婚の宴。
アパートの保証人。

柊が生まれてからは、お宮参り、お食い初め。


『1歳の誕生日に一升餅を赤ちゃんに背負わせるの。一生、食べるのに困らないようにってやる行事なんだよ』


そう言って、餅を和菓子屋に頼んでくれたのも明美で、丸々とした大きなそれを入れたリュックを柊に背負わせてお祝いしたのは、ひと月ほど前のことだ。



明美は緑茶をずずっと一口啜り、100円のショートケーキを咀嚼しながら言った。


「今年は、柊の初節句やるけど、あんたのお母さん、五月人形、買う余裕ある?鯉のぼりは私が買うけど」


「……あると思いますけど…夜、電話して訊いてみます。」


秋菜は柊の口に幼児用ボーロを入れてやりながら、答える。

去年は柊が小さすぎて、大変だからと今年初節句をやることにしていた。




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