唯一無二のひと
この頃、豪太の提案で、胸のマッサージの時、ローションを使っていたから、前の方はサラサラしっとりなのに背中はブツブツガサガサ、という状態だった。
由紀恵と柊と三人で、一階にある大浴場に向かう。
大浴場には誰もいなかった。
メインの大きな大理石風の浴槽と、隣にもう一つジャグジーの浴槽があるだけのシンプルな作りだ。
温かそうなお湯が浴槽に満ち溢れている。
洗い場もゆったりしていた。
「すっごーい!広ーい!」
秋菜は嬉しくなってはしゃいだ。
どこも隠さず、大胆に歩く。
浴槽のふちに腰掛け、脚で思い切り湯を蹴ってバシャバシャした。
ついでに子供みたいに、平泳ぎもした。
ここでも柊は、場所見知りして抱っこした由紀恵の胸から、離れようとしない。
無理に床に降ろそうとすると、嫌がって泣きわめいた。
「困ったわねえ、柊ちゃん」
由紀恵は、眉を寄せる。
「それじゃあ」
秋菜は、スパバッグから小さなおもちゃのアヒルを取り出し、少し湯の入った
風呂桶に浮かべた。
「はい!」
それを柊の目の前に差し出す。
そのアヒルは、家から持ってきたアヒルだ。
こんなこともあろうかと、スパバッグに忍ばせてきた。
大当たりだった。
大好きなアヒルの登場に、柊は機嫌を直した。
由紀恵の胸から降り、洗い場の床にペタンと座って、アヒルで遊び始めた。
「秋菜ちゃん、さすがママね」
由紀恵に褒められ、秋菜は少し得意になって、胸を逸らした。
柊が離れて、由紀恵の裸体がもろに秋菜の目に入る。
久しぶりに見る母の裸。
相変わらず、白くキメの細かい肌をしている。
服を脱ぐと意外にボリュームがある身体付きだ。
胸など秋菜に負けないくらい綺麗な形で突き出ている。