唯一無二のひと
唯一無二の男
夕飯は宴会場で、バイキング形式だった。
ここも人で溢れていた。
ファミリー客が圧倒的に多いが、それに混じり、中年男性ばかりのゴルフ客らしきグループもいる。
決して豪勢ではないけれど、北海道の食材を使った心尽くしの料理がいくつもの大皿に並んでいた。
風呂上りの由紀恵は、白地に紺の撫子柄の浴衣をしっとりと着こなしていた。
秋菜もその浴衣がとても気に入った。
「すごく可愛いでしょ?」
豪太の前で両腕を広げて、柄を見せる。
「あー。よく似合うよ。うん」
豪太は、少し照れたように言ってから、箸で鮭のルイベをつまみ、口の中に放り込んだ。
「柊ちゃん、アーン」
由紀恵が、柊の小さい口に食べ物を運ぶ。
由紀恵は、持参したベビーフードや、バイキングの食べられそうなものを選んで柊に食べさせてくれた。
柊は大人しく、いい子にしてベビーチェアに座り、食事を楽しんでいた。
お陰で、秋菜もゆっくり食事を楽しむことが出来た。
豪太は1本だけビールを頼んだ。
食事が済み、部屋に戻る途中で、由紀恵は、ホテルの売店に寄りたい、と言い出した。
ホテルの中には、小さな売店があった。
「島田さんと、明美おばさんに何かお土産、買わなきゃ。
何がいいかしら…」
由紀恵は、抱っこしていた柊を豪太に、はい、お願い、と言って手渡した。