唯一無二のひと
「そっかあ。じゃあ、俺も早く寝ようっと」
豪太が戯けて言い、皆で笑った。
貸し切り風呂の予約時間まで、皆でテレビのある部屋に集まって過ごした。
人心地つき、座卓の向こうでテレビを眺める由紀恵をなんとなく見ているうちに、秋菜はふと、気が付く。
由紀恵の浴衣姿がゾクゾクするほど色っぽいことに。
化粧が剥がれ、物憂げな感じがよかった。
宴会場での夕食の時、隣のテーブルにいたゴルフ客らしき男性四人グループが、ちらちらとこちらのテーブルの様子を伺っていたのは、由紀恵のせいだと分かっていた。
その中の一人の、酒に酔って浴衣の前をだらしなく開けた頭の薄いおじさんが、しきりに由紀恵に話しかけたい素振りをみせていた。
通路を挟んだ由紀恵の隣の席に移り、やたらそわそわしていて、挙動不審だった。
それに気付いた由紀恵は、顔を背け、意識して彼らのテーブルの方を見ないようにしていた。
豪太も気付いていた。