唯一無二のひと
ミルキーウェイ
「あーあのスケベなおっさんたちだろ。由紀恵さん、男殺しだよなー」
露天風呂の脱衣所で豪太がジーパンをずり下げながら言った。
辛子色のボクサーパンツが現れる。
「男殺しって…」
両腕を上げて、ピンクのキャミソールを脱ごうとしていた秋菜はぷっと吹き出した。
「それこそ、昭和のムード歌謡だよ」
「そうそう。男殺しのラブゲームな」
タオルを肩に掛けながら、豪太は得意げに訳のわからないことを言った。
狭い洗い場で汗を流し、ガラス扉を開けて、秋菜は夜の外へ出る。
大小不揃いの岩に囲まれた野趣溢れる露天風呂は、大人四人くらい入るのがちょうど良い大きさだった。
すぐそばを流れる渓流のしゃらしゃらという音。
夏の虫の鳴く声。
灯籠風のLEDライトに照らしだされた湯の表面から、ふわりふわりと白い湯気が立ち昇る光景は幻想的だった。
茶色く濁った適温の湯は、秋菜の身体を優しく包み込むようにまとわりく。
秋菜のあとから豪太が入ってきた。
浅黒い肌。
痩せて見えるのに、意外に筋肉質な胸と腕。
筋張った長い手脚。