唯一無二のひと
「天の川ってミルキーウェイっていうんだよなあ…」
豪太が空を見上げたまま、感心したようにつぶやく。
「ふうん。ミルキーなんだ、可愛いんだね…」
秋菜が上を向いたまま、お願い事をしなきゃと考えた時、豪太が、すっと秋菜の前に廻りこんだ。
豪太の後ろには煌めく満天の星空が広がり、秋菜には、まるで豪太が星を背負っているように見えた。
『星の王子様みたい…』
秋菜に向かい合った豪太は、いきなり秋菜の両腕を掴んだ。
「俺、このすっげえ星に誓った!」
興奮気味に叫んだ。
「これからも、秋菜の全部、愛していくって!」
………!
秋菜の頭の中はぼうっとなる。
豪太がこんなに情熱的な言葉をくれたのは、初めてだった。
身体の奥の芯が痺れ、魔法にかかったように動けなくなる。
「…私も…豪太の…」
応えなきゃいけないのに、声が掠れ、うまく喋れなかった。
目の奥が熱くなる。
息を吸い込んで、お腹に力を入れてみても声が出ない。
秋菜の言葉を待つように豪太が首を傾げる。
「私も……
豪太の、顔も、身体も。
手も、髪も、声も…
過去も未来も、全部……」
愛してると言いたかったのに。
秋菜の二つの瞳から、流れ星が
こぼれ落ちる。
その先の言葉は、遥か百億万光年前の
星空に吸い込まれてしまった。
ミルキーウェイの彼方に。
【完】