寂しさの代償
寂しさの代償

さっきから私をちらちらと見てくる男性がいることに気がついていた。

はす向かいに座る彼は、社会人にしてはやや長めの髪の毛で、わずかに明るくカラーリングしている。

さわやか好青年ふうのそのマスクは、どストライクだ。


高鳴る胸は、うっかり恋に落ちそうな予感を伝える。

けれど、愛しい彼の顔が浮かんで、必死で自制をかける。


4月にこれまでの功績が認められ、彼は東京本社に栄転になった。

仕事の忙しさに拍車がかかり、連絡すらままならない。

私から電話したいのに、迷惑になるかもと案じる気持ちから、怖くてかけられないでいる。


最後に彼の声を聞いたのは、いつだっけ。

遠距離恋愛って、こんなにつらいものなんだろうか。

会えない距離が、寂しさを増幅させる。


寂しいよ。

寂しいの。

今すぐ会いたい。

私を力強く抱きしめてほしい。


友人にどうしても、と拝み倒されて参加した合コンだ。

もちろん私は人数合わせのためというのは十分に解し、出逢いなんて求めてなかったのに。

どうして私を見てくるの。

その視線に耐えられそうにない。

避けられたと誤解されないよう、さりげなく顔をそらす。



「あれ、けっこう減ってるね。お代わり、頼む?」



私の手中の3分の1以上減ったウーロンハイのグラスをのぞきこみながら、友人が訊いてきた。


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