寂しさの代償

今夜の私のペースは、ふだんよりも早いかもしれない。


だけど。

飲まなきゃやってられない。


一瞬でも気が緩むと、彼のことを思いだしては寂しくなる。

1人、白けさせてはいけない、と場を盛りあげるためにあおってあおって。

何杯くらい飲んだだろう。

顔がひどく熱い。


立ちあがると、足許がわずかにふらついた。



「メイク直してくるから、お代わり頼んどいて?」

「うん、わかった」



バッグを手にして飲み会のスペースから抜ける。

パンプスを履くとピンヒールのせいか、足がもつれた。

やばい。

前のめりに倒れこみかけて、とっさに手を差しだす。

派手に転ぶかも。

目をつぶったのに、衝撃はなかなか襲ってこない。


おそるおそる目を開けると、飛びこんできたのはたくましい胸板。

抱きすくめられている、と状況を把握するのに時間がかかった。

顔を上げれば、柔和な目が見おろしている。

さっき、私を見ていたさわやかな彼だった。



「大丈夫か?」

「……はい」

「嘘言え。大丈夫じゃないだろ、あんなに飲んでたくせに。送ってくから、もう帰ったほうがいい」



その夜、私は過ちを犯した。




【完】

< 2 / 2 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

ヒートハート

総文字数/6,098

恋愛(オフィスラブ)7ページ

表紙を見る
ラスト・ラブ -制服のときを過ぎて-

総文字数/84,358

恋愛(その他)103ページ

表紙を見る
ラスト・ラブ

総文字数/1,115

恋愛(その他)2ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop