リアル

イタすぎる再会

　病院に着いたのはもうすっかり日の暮れた夜で、救急と書かれた光る看板がやけに目についた。
　キイチは相変わらず無言のままで、目だけを俺に向けて降りろと催促する。ゆっくりと車から降りキイチの側に寄り、動きだす背中について歩く、病院の薄暗く長い廊下、聞こえるのは二人分の足音だけ。
　自動ドアを抜けた先でキイチが足を止めた。大きなガラスの前でキイチの横に並ぶ。
　ガラス張りの部屋から漏れてくる明かりに目が眩んだ。
　その部屋の真ん中に頭の中にいる姿とは全く違うサトシがいた。
　寝ているサトシを見てやっとわかった。
　なんでキイチがあんな顔しか出来ないのか、なんでわからんしか言えないのか。やっとわかった。
　機械の音とサトシの呼吸音だけが響く白く四角い病室。その真ん中で寝ているサトシの姿、目の上まで巻かれた包帯、色んな所から伸びた管、ガーゼとテープだらけの腕と顔、変な形に凹んでる掛け布団。
　まさかと思い続けていた事をそのままつき付けられた気がした。
　サトシはいま、あの機械に生かされてるんじゃないのか？
　キイチは苛ついていたのかもしれない、何度も何度も大丈夫かと聞く俺に。いま誰かにサトシの事を聞かれてもきっとキイチと同じような態度しかとれないだろう。同じような顔で何を聞かれてもわからんとしか言えないと思う。
　軽々しく大丈夫だとは言えない、危ないとは口にしたくない。それ程危険な所にサトシはいる。
　キイチは泣きそうな目をしたまま真直ぐサトシを見続けていた。話し掛ける言葉は見付けられない。
　どれくらいサトシを見ていただろう、規則的に上下運動を繰り返す胸から目を離す事が出来なかった。
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表紙・目次

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