リアル
キイチはいつもの挨拶をしなかった、車を発進させた直後に短くクラクションを一回鳴らす、いつものじゃあなの合図をしなかった。忘れたのか? しなかったのか?
車の光が見えなくなるまで見送って、家の方へ振り向いた。すっかり明かりの消えた家を見た時、今日帰るという連絡をし忘れていたことに気付いた。もちろん鍵はしまっている。
申し訳ないと思いながらもインターフォンを鳴らす。
ピンポンパンポンピンポン ピンポンパンポンピンポン
鳴り響くチャイムと同時に、扉の奥からうるさく吠える犬の声が聞こえた。やっと地元に帰ってきたという感覚に全身が包まれた。
暫くして犬を諌める声と足音が聞こえ、玄関に明かりが点った。
ガチャガチャと鍵を開ける音が響き、扉の隙間から不機嫌そうに寝ぼけた母親の顔が覗いた。
真夜中の訪問者になんの声も掛けず、扉を開ける行為を少し心配に思ったが何も言わなかった。
「なんあんた、なんしよるん?」
東京にいる筈の息子が帰ってきた、しかもこんな真夜中に。当然の驚きだろう。
「電話すんの忘れちょったわ」
「忘れちょったって、なんしたん?」
一気に目が覚めたという顔つきでもっともな言葉を言う。
「とりあえず中入れてーや」
母さんはびっくりした顔のまま、家の中へと入っていく俺を眺める。
纏わりつく犬を抱きかかえ居間に入り、俺の定位置に座った。
車の光が見えなくなるまで見送って、家の方へ振り向いた。すっかり明かりの消えた家を見た時、今日帰るという連絡をし忘れていたことに気付いた。もちろん鍵はしまっている。
申し訳ないと思いながらもインターフォンを鳴らす。
ピンポンパンポンピンポン ピンポンパンポンピンポン
鳴り響くチャイムと同時に、扉の奥からうるさく吠える犬の声が聞こえた。やっと地元に帰ってきたという感覚に全身が包まれた。
暫くして犬を諌める声と足音が聞こえ、玄関に明かりが点った。
ガチャガチャと鍵を開ける音が響き、扉の隙間から不機嫌そうに寝ぼけた母親の顔が覗いた。
真夜中の訪問者になんの声も掛けず、扉を開ける行為を少し心配に思ったが何も言わなかった。
「なんあんた、なんしよるん?」
東京にいる筈の息子が帰ってきた、しかもこんな真夜中に。当然の驚きだろう。
「電話すんの忘れちょったわ」
「忘れちょったって、なんしたん?」
一気に目が覚めたという顔つきでもっともな言葉を言う。
「とりあえず中入れてーや」
母さんはびっくりした顔のまま、家の中へと入っていく俺を眺める。
纏わりつく犬を抱きかかえ居間に入り、俺の定位置に座った。