リアル
わかりきってるからこそ苦しい。
 こんなことになってしまった理由も実はわかってる。
 これでもかっていうほど挟まれてしまったんだ。身動きもとれない程キュウキュウに、いつからかっていうのは思い出せないけど、きっと自分でも気付かない内にじわじわとっていうのが正解。
 いつの間にか俺を前にも後ろにも横にも上にも下にも行けなくしたものの正体、それは俺の中のポジティブとネガティブ。誰もが持っていて、きっとみんな毎日この二つを戦わせながら生きているんだと思う。ポジティブが勝てば乗り越えることに精を出し、ネガティブが勝てば妥協する。
 俺の中のポジティブとネガティブは一向に勝負がつかない。
 自分には他人とは違う何かとてつもない才能があって、動き出せばきっとなんでもできるということを本気で思っている俺、その俺を本気でキモいと思っている俺、そして自分が何者でもない事をわかっていながら確信することにビビっている俺。全部捨てたい俺。
 この間抜けな戦いの終末をただただ待つ内に、正解のわからない道を選ぶ感覚も、ちょっとずつ溜めていった努力を捨てる勇気もなくしてしまった。
 そして、なにもできなくなった。
 どうすればどうなるんだろう。普通、悩みの理由がわかれば解決できると思うんだけど。なにがしたいのか、なにをしているのかわからなくなった。
 思春期の再来か? 二十五歳にして? アホらし・・・。
 そんな自分戦争を日々続けながら、生きる為に働く、寂しくならないように約束をする。
 ぼんやりした毎日をぼんやり過ごしている内に、その日は突然やってきた。
 自分からした約束を後悔しながら、待ち合わせ場所に向かっている時だった。
 ♪〜
 間抜けな音を響かせ、携帯が着信告げた。
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