リアル
「お前ら来ちょったんか」
 おじちゃんはおばちゃんを座らせながら言った。
「サトシどうなん? なんか聞きいっちょったんやろ?」
 俺は急かすような口調でおじちゃんに聞く。
「お前ら、サトシんとこ顔見にいっちゃってくれんか?」
 俺の質問は流された。
「中入ってもええん?」
 キイチが聞く。俺はさっきの質問をもう一度繰り返すか考えていた。
「ええよ、あそこにおる看護婦さんに言ったら入れてくれるけー顔見てきー」
 キイチが歩き出した。タツもハルもゆっくり立ち上がった。俺はさっきの質問を諦めた。
 近くにいた看護師にキイチが声を掛ける。
「すいません、内藤サトシに会いたいんですけど」
 看護士は何か作業をしながら、久しく聞いていないような明るい声で答えた。
「内藤君のお友達?ちょっと待っちょって、準備してくるからね」
 こいつには俺らの顔が見えないのか? 俺らの不安がわからないのか? おばちゃん達の腫上がった目の理由を知らないのか?
 空気の読めない看護師が水色の服を持って戻ってきた。それを羽織り、サンダルに履き替えてサトシの所に向かった。
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