リアル
 三ヶ月振りに見るサトシの顔は、頭から目の上まで包帯に巻かれていて、両頬はガーゼとテープまみれで、ベッドの上に付けられた名札に名前が書かれてさえいなければ、俺はここに寝ているのがサトシだと認める事が出来ないかもしれない。
 サトシはそんな事を思わせるような姿で寝ていた。でも、そこに寝ているのは確かにサトシで、水色の服から飛び出ている浅黒く筋肉質な腕は確かにサトシの腕で、ここに寝ているのがサトシじゃなかったら、俺らはここに居て喋れなくなるほど悲しんでなくて、おじちゃんとおばちゃんもあんなに目を腫らすこともない。
 これがいまのサトシで現実だ。
 ハルはサトシの側に寄るなり、泣き崩れてしまった。いまのいままで喉の奥に押し込めていたものを吐き出すように・・・。
 タツはそんなハルの後ろで呆然としている。キイチはサトシの顔を覗きこんだまま動かない。俺はベッドの横にあった丸椅子に座りサトシの腕を掴んだ。俺の手より温かい気がした。
 また、ひどい恐怖と不安に捕まった。
 喉が痛い。
 しばくしておじちゃんとおばちゃんが入って来た。俺らは無言で部屋をでて、水色の服を脱ぎ看護師に渡した。
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