リアル
「キイチお前いまどこおるん?」
「さっきまでサトシんとこおったけど、いま家帰ってきた」
「そっか、俺さー、いまからそっち帰えろうと思うんやけど」
「はぁ? いまから?」
「ん、いまから」
「わかっとるやろうけど、お前が来てもどうもならんぞ」
「わかっとる。わかっとるけど・・・」
「わかっとるんならもうちょっと考えーや、明日月曜よ。仕事あるやろうが」
「なんとかなるやろ。たぶんやけど。仕事よりなにより、気になるし」
「それはわかるけど・・・」
 キイチの声に比べてハキハキした俺の声が耳につく、きっとまだ事実を現実にできてないんだと思った。
「いまから空港いくけー、飛行機の時間わかったらメールするわ。ごめんやけど、宇部まで迎え来て」
「わかったけど、ホントにええんか?」
 キイチが戸惑うのは良くわかる、今日帰って今日戻れるような近い距離じゃない。いまから空港に向かって、上手く飛行機に乗れたとしても、地元に着くのは夜だ。明日は完璧に仕事を休まないといけない、もしかしたらそれ以上。
「ええ、んじゃ後で」
 電話を切った瞬間に、携帯に登録してある航空会社のサイトにアクセスし、地元行きの飛行機の空席を検索した。ただの日曜だけあって、難なく予約する事ができた。困ったことはただひとつ、突発的に決めた帰郷に財布の中身がついていかない。貯金も確か底だったはず。こうなったら取れる手段はただ一つ、魔法のカードを使って諭吉を召喚するしかない・・・。マジックポイントはまだギリで残っていたはずだ。
 駅に向かいながら召喚スポットを必死に探した。
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