リアル

　サトシの状態を上手く飲み込めずにいる今、焦りながらキャッシングに走っている自分の状態だけが現実のようで、サトシの心配をしながらも、自分の持ち金を気にしている自分の姿だけが、やけに実感できる現実だった。
　自分の生活とサトシの安否、二つの不安を交互に考えては振払いながら歩く。改札の横にＡＴＭを見つけた。もしかしたらと思い、銀行のカードを入れてみる、給料日まで後４日、もしかする筈がなかった。大人しく諭吉を召喚し空港へ急いだ。
　電車に乗り込み外を眺める、都会の景色にもすっかり慣れた。もうどんなにでかいビルを見ても驚かない。また、自分戦争サトシ戦が再戦されようかという時に、電車はホームへ滑り込んだ。
　空港に到着し、チェックイン機に真直ぐ向かう。まるで自分のもののように財布から金を出して、チケットを購入し、そのままチェックインした。
　手荷物検査ゲートは、大きな荷物を抱えた人達で行列ができていた。鞄もお土産も持たず、チケットと携帯だけを握りしめその列に並ぶ俺だけが、場違いのように浮いている気がした。少な過ぎる手荷物の検査を終え、搭乗口に移動する。
　搭乗案内が始まるまで後十五分、飛行機の到着時間をキイチにメールした。そして躊躇いながらも上司の携帯番号を探す。緊張し過ぎて、何を言うかまとまらないまま発信ボタンを押してしまった。呼び出し音が響く間、必死に考えていた。何か適当にもっともらしい嘘をつくか、それとも今の状況を正直に説明するか。
　答えの出ないまま曇った声が耳の中に飛び込んで来た。もう正直に言うしかない。