リアル
「もしもし」
「もしもし、お休み中すいません。高橋ですけど、いま大丈夫ですか?」
 嫌な緊張のせいで心臓がどんどん早くなる。
「なに?」
 思いっきり不機嫌な声。
「いきなりで申し訳ないんですけど、明日と明後日、会社を休ませてもらえないかと思いまして・・・」
「はぁ? なんで?」
「さっき地元の友達が事故って入院したっていう連絡があったんです。怪我もかなり酷くって、意識がまだ戻らないって。どうしても気になるんで、いまから地元帰ろうかと・・・」
「お前バカだろ。友達事故ったくらいでそうですかって休ませられると思ってんの? 勘弁してよ、マジで!」
「ホントすいません」
「すいませんってマジで帰んの? つーかお前いまどこだよ?」
「羽田です」
「はぁ? マジで? 帰る気満々じゃん!」
「すいません」
 携帯を持つ手が尋常じゃないほど震えていた。
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