あたしの甘ーい幼なじみ
「……ちょっと、抜ける」
「おーう」
部活を抜け出し、俺は保健室に向かった。
授業中に羽衣子ちゃんが倒れたらしい。
ちょっとでも様子を見れたらいいけど。
階段を登っていると、声が聞こえた。
見えたのは――栗色の髪
あ、
「羽衣……」
彼女の後ろから背の高い男の姿が現れ、俺は口を閉ざした。
「ほら、鞄かせ」
「えー?いいよー」
「病人は素直に従え」
「……ありがと」
俺に気づいた様子のない2人は、そのまま俺の前を通り過ぎていく。
――――――……
なんだ……?
その姿を見送りながら、少年は首を傾げた。
今までに味わったことのない、なんとも言えない気持ちが溢れるのを感じながら。
少年は、その場に立ち尽くしただけだった。