【短編】先輩とあたし
秋斗先輩、絶対に困ってた。
秋斗先輩、笑ってなかった。
秋斗先輩、迷惑だったよね。


次の日の学校だって行きたくない。
だけど、朝は必ずやって来る。
行かないとお母さんがうるさいから仕方なく学校へと向かった。
嬉しいか悲しいかはわからないけど、秋斗先輩とは会わなかったから安心した。

告白した事も昨日の出来事は親友の仁美にさえ話さなかった。
話せなかった・・・だけどね。

放課後だって毎日行っている体育館にも行かなかった。
そして帰ろうとして体育館の前を通りすがった時。


「桜井さーん!」


突然、名前を呼ばれビックリした。
どこか聞き覚えのある声だ。

当然、あたしは声のする方に体を向けた。


「あっ・・・岩崎先輩!」


あたしの名前を呼んだのは秋斗先輩と仲が良いバスケ部の岩崎先輩だった。
どうしたんだろう。
あまり話した事のない岩崎先輩だから余計にでも不思議に思った。


「あのさ、秋斗がスゲー暗いの!」

「え?・・・どうかしたんですか?」


焦っている岩崎先輩を見ながら少しあたしは顔が曇った。
どうして、そんな事をあたしに言うんだろう。
今、あたしの前で秋斗先輩の話は止めて欲しいな。
・・・悲しくなるから。


「わかんねぇけど・・・何かあった?」


どうしてあたしと何かあったって岩崎先輩は思ったんだろう・・・。
今日、体育館に行こうとしてなかったから?


「いえ、別にないです・・・」


あたしは岩崎先輩に嘘をついてしまった。


「そっか・・・あのさ、アイツ・・・。」


そこで言葉を詰らせる岩崎先輩。
アイツとは秋斗先輩の事だろう。
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