濡れる視線 ~彼氏がいるのに図書館で~
【辞典のコーナーで待ってて】
準教授からのメールに、ときめきを抑えることができない。
指先が震える。
【はい】
そうメールを返信するだけで、体中がドキドキしておかしくなりそうだった。
コツコツコツコツ
近付く足音に、体が熱くなる。
本棚の隙間から見えたこげ茶色のスウェードの靴。
ぶつかる視線。
すぐに彼は私の向かいの席に座った。
そして、難しそうな分厚い本に目を通す。
右手には、靴と同じ色の革のボールペン。
数分間の沈黙が続く。