欲情するくちびる
欲情するくちびる
抵抗するまもなかった。
一瞬早く唇を奪われていた。
どうしてこうなったんだろう、と思考の片隅で考える。
ゼミのコンパが開催され、駅前の全国展開されているチェーンの居酒屋に来ていた。
友人の彼氏も一緒のゼミを受講している。
その彼とゼミが同じになったのはまったくの偶然でしかなく、知った時にはたいそう驚愕したものだ。
ゼミは別々だけど、私にも大学に入ってできた彼氏がいる。
4人で遊んだりするほど仲はいい。
友人の彼氏も参加することは知っていただろうに、ゼミコンパなら仕方ないよね、と二つ返事をもらって今夜参加した。
アルコールを飲みすぎて夜風に少しあたりたいと思って立ちあがった時に、友人の彼も同じタイミングで立ちあがったのは妙だな、と思ったはものの、あまり深くは考えず。
飲み会のスペースを抜けて、柱の角を曲がった時にいきなり腕をぐいっと力強くつかまれて。
何すんのよ、と憤然と振り返った時には、後頭部を押さえつけられて、あっという間に唇をふさがれていた。
交わった唇からアルコールの匂いが溶けあうように流れこんでくる。
彼氏以外の男性とキスをしてしまったという罪悪感はかすかに感じるのに。
何度も角度を変えてくり返されるキスに、理性がだんだんと奪われていく。
もう何も考えられない。
考えたくない。
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