拒めない誘惑《TABOO「飲み会で…」》
捕らわれて
午後10時、カサブランカの香りが立ち込める化粧室。
よく磨かれた鏡の前で私は、さっき会ったばかりの男に捕らわれていた。
アキラという下の名前しか知らない男。
友人のカンナに呼び出され仕事用のスーツのまま立ち寄ったバーで、アキラは私を見るなり艶やかに微笑った。
カンナが仕事で知り合ったというこの男を、私は最初のその瞬間に苦手だと思った。
女の扱いが上手そうで、見透かしたように見つめる眼も好きになれないと思ったのに。
私は今、その腕の中にいる。
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