《俺様的》彼女の手なずけ方
どうしてここに…?



今、ナルと一緒にいるはずの清香さんが目の前にいる。



これはマンションのエントランスだから、ドアの前にいるわけではないけど、恐ろしくてたまらない。



逃げ場がない。



清香さんのことだから、なんとしてでもここへやってくるはず。



「早く出て。ナルのことを考えるなら、そうするのが懸命よ」



っ…ナルをダシにあたしを動かそうと?



そんな手には乗らない。



急いでナルに連絡を入れる。



《清香さんがこっちに来た。部屋に入れちゃダメだよね?》



やっぱり既読はつかない。



電話にも出ないし、もうっなにしてるの?



もう一度インターホンが鳴った。



《篠原さん、すぐにここを開けて。これまでのあなたへの態度を改めます。今日はあなたに大切な話があって来たの。そのことについて話しに来ただけよ》



いつもとは違う、穏やかな顔。



これが演技だとしたら?



今までされたことを思うと、今さらって気もする。



《お願いします、ここを開けてください…》



まさか清香さんが、殴りかかってくることもないだろうし…ここまで言うなら開けるしかないのかな。



結局、あたしはロックを解除した。



「ありがとう。最上階までのエレベーターのロック解除もお願いするわね」



どうやればいいのかわからないけど、インターホンの説明を見ながらなんとかやってみる。



しばらくするとカメラが切り替わり、エレベーターの中を写した。



清香さんがひとりでエレベーターに乗っている。



エレベーターの扉の開くと共に玄関をドアも開いた。



清香さんがあたしの目の前に現れた。



「篠原さん、私の話を聞き入れて下さってありがとう」



今まで見たこともないような低姿勢で、清香さんが頭を下げる。



「何の用ですか?」



「あら、今日はケンカをしにきたわけではないのよ?こちらに座ってもよろしくて」



リビングのソファに腰掛けると、フゥとひとつため息をついている。



「ナルは…清香さんと一緒にいるようなことを言ってるんですけど」



「さっきまでは、ね。今は私の者と一緒よ。あなたとこれからここで一緒に暮らす…と」



「…………」




「昨日は酷かったわね。あんな最悪なパーティ初めてだわ」



< 643 / 711 >

この作品をシェア

pagetop