空色縞瑪瑙
腹は立てないで、横にしなさい。
昔、母が私に言った。
私は、その言葉を大切にした。
腹が立ってキレてしまえば、確かにその場はおさまるかもしれない。
けれど、場の空気は悪くなる。
少し言葉を変えれば、もっと変わったのかもしれない。
それを思うと私は母の言葉を大切にできた。
だからなのか、本当に辛いことがないかぎり、ひなた以外の人前で泣くことは殆どなかった。
最後に涙を流したのは中学生の時だ。
しかし、こればかりはどう頑張っても抑え切ることができずに、ひなたに泣きついてしまった。
「よしよし。」
私はその日、一時間だけ保健室で休んだ。
ひなたの念にかなりおされ、大丈夫だといっても休めと無理矢理保健室まで引っ張られた。