空色縞瑪瑙




腹は立てないで、横にしなさい。



昔、母が私に言った。


私は、その言葉を大切にした。


腹が立ってキレてしまえば、確かにその場はおさまるかもしれない。


けれど、場の空気は悪くなる。


少し言葉を変えれば、もっと変わったのかもしれない。


それを思うと私は母の言葉を大切にできた。



だからなのか、本当に辛いことがないかぎり、ひなた以外の人前で泣くことは殆どなかった。


最後に涙を流したのは中学生の時だ。


しかし、こればかりはどう頑張っても抑え切ることができずに、ひなたに泣きついてしまった。



「よしよし。」



私はその日、一時間だけ保健室で休んだ。


ひなたの念にかなりおされ、大丈夫だといっても休めと無理矢理保健室まで引っ張られた。






< 35 / 84 >

この作品をシェア

pagetop