空色縞瑪瑙
その人が、ただ一人の女の子を愛することができないのが、とても悲しいのだ。
「アスね、霜月が空ちゃんと付き合ったときは、負けたなって思ってた・・・。」
「え」
「空ちゃんは、幸せになったほうがいいと思ったの。とても素直な子だもん、曇りけなんて一つもない。だから、身を引いても我慢できた。霜月を横取りしようとか、空ちゃんに意地悪しようとか思わなかったよ。」
アスは俺に訴えた。
そして、しがみついた手をはなして、俺にぽすぽすとこぶしをぶつける。
痛い。こぶしが痛いんじゃなくて、アスの心がそのこぶしに乗り移って、痛みを逃がしているような気がして。
アスが落ち着くと、ずっと玄関にいた俺を部屋へといれてくれた。
アスの家には何度も来ている。俺は大体の勝手をわかっていた。
「ココアあるからそれでいい?」
「・・・・うん。」
「落ち着くまで一緒にいるよ。」
「・・・・うん。・・・・ね、宙人?」
「なんだい?」
「宙人は、どうしてそんなに優しいの?」
「え?」
「女の子に、そうやってみんなに優しい?」
「まさか。俺が女子とそんなにしゃべんないこと知ってるだろ。」
「・・・・うん。アスと空ちゃんしか話してないね。」