雨宿り
雨宿り
朝、感じた湿った空気。
それは営業で外に出ていた私の予想通り、土砂降りになった。

濡れたスーツが重い。
電機メーカーに勤める私の鞄には、新商品のカタログが入っている。

濡れる鞄を庇いながら、私は走る。
営業車は停められる場所がなく、長い階段を降りたりで十分ほど歩かなければならなかった。

そうして。私が豪雨から逃げるように飛び込んだのが図書館だった。

平日の午前中。人も少なく仕事中の司書も手持ちぶさたらしい。

私が濡れた髪をかきあげると、「よかったらどうぞ」と目の前にタオルが差し出された。
< 1 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop