雨宿り
見かねたのか司書の青年が言った。
それにここは本を扱う場所。ずぶ濡れの自分は、迷惑な存在だったのかも。

「ごめんなさい、すぐに出ます」

「気にしなくていいですよ。今日はお客様も少ないんで。休んでいってください」

そうして、ソファを勧める。

タオルを借りて、肩や髪を拭くと、私は促されるままに腰をおろした。

「ありがとう。助かりました」

タオルを返すと、

「先輩も大変ですね。こんな雨の中、仕事なんて」

「え?」

驚いて見あげると、彼は気の毒そうな表情を浮かべたまま、首を傾げた。

「もしかして気づいてない?」

「え」

「俺、大野亮平(おおの りょうへい)」

すぐに名前の出てこなかった私に、おどけたように言う。
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