お嬢様になりました。

プロローグ

「今更何しに来たの！？ 帰ってよッ！！ 帰ってちょうだいッッ！！！！」



お母さんの大きな声で一気に夢から現実に引き戻された。


私泣いてそのまま寝ちゃったんだ……。


目を覚ました途端鼻を掠めるお線香の匂い。


お婆ちゃんは本当に死んじゃったんだと改めて感じた。


薄暗い部屋の中を見渡すと部屋には私以外誰も居なかった。


大好きなお婆ちゃんはもういないんだ……。


腫れた目をこすりながら扉を開けると、怖い顔をしたお母さんがいた。


お母さんの目の前には知らないおじさんと無表情な男の人。


誰だろう？



「私たちがどれだけ大変な思いをしたか知ってる！？ 知らないでしょう！？ 貴方なんかが知るはずないわよねッッ！！」



おじさんは泣き叫ぶ様に怒鳴り散らすお母さんを真っ直ぐ見つめているだけで、何も言わなかった。


そんなおじさんが泣いてる様に見えた。



「……お婆ちゃんに会いに来てくれたんですか？」



夜遅く人の少ない時間だからか、思いのほか私の小さな声は葬儀会場に大きく響いた。


おじさんと目があうと、おじさんは目を潤ませた。


深みのある瞳は細められ、私はその目を静かに見つめた。