お嬢様になりました。
「あぁ?」



うわー……。


今にもブチっといってしまいそうな程青筋を立てた海堂の姿に、怒りでこみ上げた熱がどんどん引いていく。


この態度にこの表情……まるでチンピラ。


それでも品だけはなくならないんだから不思議だよね。



「えっ!?ちょ……ッ」



グイッと腕を引かれ、倒れる様に海堂の胸の中に吸い込まれた。


離れようにも離れられない。


私の後頭部と腰には、海堂の大きな手が回されているから。



「東條に俺たちの事、何て話したんだよ」

「こ、婚約者だって……話した……」



また怒鳴られるかと思いきや、冷静で静かな口調に拍子抜けしてしまった。


もう気がすんだのかな?



「他には?」

「他って……? ただ婚約者としか話してないけど……」

「本当にそれだけかよ?」

「しつこいなぁー、それだけに決まってるじゃん。 事情までペラペラ話せるわけないでしょ」

「そうか……」



安心した様な声を漏らした海堂は、更に私をギュッと抱きしめた。



「海堂?」



海堂は怒ったりこうして急に弱くなったり、とにかく感情の波が激しい。


でも、楽しそうに笑ってる海堂をまだ見たことがない。


そう思うと何故だか悲しい気持ちになった。





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