お嬢様になりました。
海堂の背中に腕を回し、子供を宥める様に優しく叩いた。


大きな子供……海堂は私の中ではそんな印象が強くなりつつあった。


本人に言ったら怒りそうだから、口が裂けても言わないけど。



「無理してる?」

「してるわけねぇだろ」



そうだよね。


こいつが素直に弱音吐くわけないよね。



「橘さん、放ったらかしにしてていいの?」

「お前……この状況で普通女の名前出すかよ? あんな女、俺とは何の関係もねぇよ」



一緒にいたのに?



「元婚約者なのに関係ないわけないじゃん」



しかも私にあんなに敵対心もってんだよ?


関係ないとは到底思えない。


突然海堂の体が小刻みに揺れ始めた。



「……っ」



え!?


何で?



「何で笑ってんの!? 面白い事なんて言ってないんだけど!!」

「お前、妬いてんの?」

「は!? バカな事言わないでよ!!」



海堂の胸を両手で押し退け、海堂の顔を思いっきり睨み付けた。


余裕しゃくしゃくな海堂の顔に腹が立つ。



「顔赤いぞ」

「嘘言わないでよ!! 明るくもないのに分かるわけないでしょ!!」

「そう吠えんな」



またしても犬や猫みたいな言い方!!


私はれっきとした人間だっつーのっっ!!





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