お嬢様になりました。
隣を歩く葵はずっとニコニコしている。



「巻き髪似合ってる」

「本当!? ありがとっ」



照れ笑いを浮かべ、頬をほんの少し赤く染める葵。


初めて会った時は俺に対して警戒心剥き出しだったのに、今では何の躊躇もなく俺に笑顔をくれる。


安心しきっている顔は好きだけど、そんな顔を見ていると、たまにいじめたくもなる。



「どれ観る?」

「決まってるって言ってなかった?」

「決まってたんだけど、どれも面白そうで悩んじゃって……」



映画上映の案内を見ながら真剣に悩んでいる葵。


葵はいつも何かしら真剣だと思う。


俺はあまり真剣になる事なんてないから、何にでも真剣になれる葵が少しだけ羨ましく思う。



「恋愛系がいい?」

「んー……特にジャンルにこだわりはないんだよね」

「ならこのアクション映画は?」

「そうだねっ。 迫力あって面白そうだし、それにしよっ!!」



恋愛系がいいって言われなくて内心ホッとした。


聞いてみたものの、恋愛系は苦手で、正直観る気にはならない。


普通なら相手の女の事なんて考えずに何でも決める。


自分さえ楽しければそれでいいから。


でも葵とは一緒に楽しみたいし、楽しませてあげたいと思う。





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