お嬢様になりました。
バイト?


勉強でいっぱいいっぱいだったくせに、そんな事する暇なんてあったのか?



「わざわざプレゼント自分で買う為にバイトしたのか?」

「ううん、バイトは生活する為にしてたの。 でもお祖父ちゃんと一緒に住む様になって、お金稼ぐ必要がなくなったから、最後に貰ったバイト代使わずに貯金してたんだ」



生活する為?


お祖父ちゃんと一緒に住む様になってって……今までは?


俺は葵の事を何も知らないんだと思った。



「なんか、突っ込みどころ満載なんだけど、突っ込んでいいの?」

「あ、うん。 いいよ」

「何で生活費稼ぐ必要があったの?」

「高校入学して直ぐに両親が事故で他界したから、かな。 保険金とか色々お金残してくれたんだけど、なるべく使いたくなくて、学校行きながら毎日バイトしてたんだ」



いつも明るい葵からは想像できなかった。


そんな悲しい過去を持っているなんて。


今の葵の笑顔は本当なんだろうか。


無理して笑っているようにも見える。



「本当はまだ傷、癒えてないんだろ?」

「……わかんない。 お婆ちゃんも両親もいないのに、その実感がわかないの……何でかな……?」



それを世間では癒えてないって言うんだ。


華奢な葵の体がもっと小さく見えた。





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