お嬢様になりました。
女の子たちに囲まれている玲は、ますます無表情になっていく。


こういう状況の中、普段の隆輝なら、「うるせー」とか何とか、文句の一つでも言いそうなのに、今日は静かだ。


橘さんにベッタリくっつかれてても文句も言わない。


私とは目も合わせようとしない。


いったい何なのよ。


言いたい事があるなら言えばいいじゃん。


ッッ!?


急に目の前が真っ暗になった。



「見過ぎ」



慌てて玲の手をどけ振り向いた。


いつの間にあの女の子たちの輪から出てきたの!?



「何も見てないっ!! って、いいの!?」

「葵との時間、邪魔されたくない」

「でもファンの子たちなのに……」

「関係ない。 モデルのレイの前に、俺は一人の男だ。 プライベートの時くらい自分を優先させる」



玲はいつだって真っ直ぐに気持ちを伝えてくれる。


私が恥ずかしがる事なんて御構い無しに。


でもそれは心地良くて、バカな私には分かり易かった。



「何やってんだよ!! 空いたぞー!!」

「あ、うん!! 行こっ」



竜樹に急かされ、私は玲の手を取り足早にみんなの元に急いだ。


今日の思い出に撮ったプリクラ。


楽しい思い出。


だけど、プリクラに写る私と隆輝の距離感は、そんな楽しい思い出を少しだけ苦いものにした。





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