お嬢様になりました。
「そんな顔するな」

「え?」



玲は私の体を包み込み、首元に顔を埋めた。


首筋に玲の唇が触れ、熱が伝わってくる。



「れ、玲っ、は、離れて」

「嫌だ」



ッッ顔埋めたまま喋らないでー!!


こんなところで何考えてんの!?


早く離れないと誰かに見られちゃう。


力尽くで玲から離れ、玲と向かい合う様に立った。


顔を俯かせた玲は何も喋らない。



「玲?」

「…………」



近付き玲の顔を覗き込むと、凄く悲しそうな瞳をしていた。


玲……。



「……どうしたの?」



玲の頬に触れると、玲は静かに微笑んだ。


胸が締め付けられる様な瞳から、目をそらす事ができなかった。


玲は私の手を握り口元に近付けると、そのまま優しく口付けた。


指先から体全体に広がる熱に、眩暈を起こしてしまいそうだった。


王子様。


思わずそう思ってしまいそうなほど、優美で目を奪われる動作、そして姿。



「戻ろう」

「あ、うん……」

「本当は手を繋ぎたいけど、今は我慢する」



ため息交じりに笑みを零した玲は、いつもの玲だった。


私はホッとしながら玲の後ろについて歩いた。





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