お嬢様になりました。
ドアに触れようとした手は空中で固まってしまったまま、動かせなかった。



「これは僕の不注意でできた怪我だよ。 酷い怪我でもないし、本当に大丈夫だから……心配してくれてありがとう」



山口君の言葉が胸に重く響いた。


私たちの事を悪く言う事もできたのに、言わなかった。


それどころか自分の不注意だなんて……。


ーガラガラッッ!!



「っ!?」



いきなりドアが開き、私とドアを開けた男子生徒は固まってしまった。


驚き過ぎて、心臓がバクバクしてる。



「す、すみませんっ!!」



私のバッジを見るなり、血相を変えて頭を下げ走り去ってしまった。


化け物を見る様な目で見なくてもいいじゃん。


ちょっと傷付く……。



「宝生院、さん……?」



目を見開いて驚いている山口君と目があった。


山口君の頬は昨日よりも腫れている様に見えた。


頬に貼られた白い湿布が痛々しい。


逸らしてしまいたくなる衝動を抑え、私は口を開いた。



「ご、ごめん……教室まで押し掛けちゃって……。 様子、見にきたんだけど……」

「わざわざこんな所までありがとうございます。 こんなの擦り傷ですから大丈夫ですよ」



腫れた頬でいつもの様に柔らかい笑みを浮かべる山口君の顔を見て、胸が苦しくなった。





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