お嬢様になりました。
久しぶりの二人きりでの昼食の時間が終わり、私たちは自分たちのクラスに戻る為、一般校舎のカフェを後にした。


当たり前の様に繋がれた手。


そして私もいつの間にかそれが当たり前の様になっていた。


隆輝の大きくて骨ばった手は、いつしか私に安心感を与えてくれるようになった。


こんな事恥ずかしくて本人には絶対言えない。



「あ? 今度は何だよ」



自分たちのクラスにたどり着き、隆輝が教室に入ろうとして私は立ち止まった。


隆輝は眉間にシワを寄せ、不機嫌そうな顔をしている。



「……ありがとう」

「あ?」

「来てくれてありがとう……それと、ごめんね」



隆輝の少しだけ腫れた頬を見て、申し訳ない気持ちが胸に広がっていく。


でも何故だか、ほんの少しだけ嬉しい気持ちも混ざっていた。



「こんなのたいした事ねぇよ。 それより……お前に何もなくて良かった」



素っ気ないフリをして、甘い言葉を漏らすなんて反則だよ。


胸がざわつく。


今まで感じた事のないざわつきに、内心戸惑った。



「さっさと入るぞ」

「うん……」



教室に入った私たちを見て一番に声を掛けてきたのは、橘さんだった。


私と隆輝の繋がれた手を見てギャーギャー騒いでいるが、正直今の私の耳には何一つ入ってこなかった。





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