お嬢様になりました。
二人に転校の話をしてからは兎に角残りの時間を楽しんだ。


バイト先の店長にも事情を話した。


急なお願いにも関わらず、店長は嫌な顔一つせず、いつでも戻ってきていいからねと言ってくれた。


店長の温かい言葉に、思わず涙ぐんでしまった。


周りの人たちに恵まれて、私は幸せだと思う。


普段は中々そんな事思ったりしないけど、こうして改めて自分の周りを見渡すとよく分かる。



「はぁー、疲れたぁー」



肩をトントン叩きながら、部屋に並べられた段ボールを見渡した。


忘れ物ないよね?


まぁ忘れ物があれば取りに来ればいいんだけどさ。


両親、お婆ちゃんとの思い出が詰まったマンション。


このマンションは引き払わず、そのままにしておいてもらう事にした。


お祖父ちゃんに相談したらすんなり了解してくれた。


たくさんの思い出が詰まったこの場所を、まだ手放す事が出来なかった。



「あっ!!」



大切な物を忘れてた!!


仏壇に飾っているお婆ちゃんと両親の写真。


それからお婆ちゃんが大切にしていたジュエリーボックスを手に持ち、慎重に鞄に詰めた。


もうここには暫く帰って来ないだろう。


少し寂しい思いを胸に、私は部屋中見回り最終確認をした。





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