お嬢様になりました。
私一人後部座席に乗り、荒木さんは助手席に乗ってしまった。


この広々とした空間に一人でって……。


気は使わなくていいけど、ちょっと寂しい。


まだ車の中なのに心臓がバクバクしてる。


正直不安いっぱい。


だって勉強にもついていけないだろうし、周りの人みたいに私はお嬢様なんかじゃない。


名ばかりのお嬢様でしかない。


でも一般の生徒もいるから大丈夫かな?


一般の生徒とだったら話が合いそう。


少しの期待に胸を膨らませ、シートに深く腰掛け外を眺めた。


ん?


何駅が最寄り駅になるんだろう?



「荒木さん」

「何でしょうか?」



荒木さんの後ろ姿に呼びかけると、姿勢を崩さないまま荒木さんは振り返った。



「あの、何処の駅に向かってくれてるんですか?」

「駅ではなく直接鳳学園へ向かっております」

「えっ!? 学校までじゃなくて駅まで送ってもらえたら後は自分で行きますッ!!」



いくらお金持ちの集まる学校って言っても、こんな車で行ったら悪目立ちしちゃうよ。


私の焦りとは裏腹に、荒木さんは至って冷静だった。



「葵お嬢様の様なお立場の方々は、皆様お車で登校されておりますので、あまりお気になさらずとも大丈夫ですよ」





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