お嬢様になりました。
後部座席のドアが開き、恐る恐る外に足を踏み出した。


ここ、日本だよね?


何なの……このでっかい敷地と建物は……。


桁外れの豪華さと大きさに圧倒されていると、荒木さんが声をかけて来た。



「葵お嬢様」

「は、はい」

「学校が終わる頃またこちらへお迎えに上がります。 何かございましたら私の携帯までご連絡下さい」



私は荒木さんに差し出された名刺を手にとった。


荒木さんって下の名前建(タケル)って言うんだ。


ちょっと意外。


もう少し硬い感じの名前かと思ってた。



「ありがとうございます。 何かあれば荒木さんにご連絡します」



荒木さんの名刺を胸ポケットに入れた。



「私はここまでしかお供出来ませんので、ここで失礼致します」

「あ、はい。 帰りも宜しくお願いします」



荒木さんが帰るのを見送ろうとしたが、それは許してもらえそうになく、結局私が学校の門を潜るのを見送られてしまった。


確かにみんな車で来てるけどさ、リムジンできてる人なんていないじゃん。


それに三百六十度至る所から視線を感じる。


全身穴だらけになりそうだよ。





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