しいと星屑
「はあ…はあ……」
駅の人混みから少し外れた場所に出た
彼も、そこにいた
ここなら、落ち着いて話せる
私は、静かに呼吸を整えた
ゆっくり
ゆっくり
彼は私を不思議そうに見ている
頭上に、はてなマークが浮かんでいそう
「あのっ…あの…」
上手く言葉が見つからない。
やっと呼び止めたのに。
ダメじゃん、私。
すると彼が、
少しだけ微笑んで、
口を開いた
「一昨日の事?」
お…おととい?
ああ、確かにあれは一昨日の事だった
私は、こくこくと頷いた
そして、丁寧に、慎重に、言葉を選ぶ
「私、あなたが、私の本に…」
彼は少し、理解出来ていない様子だった
「…えっと、恋愛小説!
あなたが教室で読んでいた」
私はもう一度、呼吸を整えた
「あなたが栞を挟んだシーン、好きです」
彼は何も言わない
彼は無表情だった