しいと星屑



私はすごくすごく小さな声で、
彼を呼んでみた

彼に気付かれるつもりはなかったのに
その声は聞こえてたみたいで、


彼は少し笑った


声は出してなかったけれど、
表情と振動でなんとなくわかった

その笑顔は少し困った様な顔で


私は恥ずかしさで顔が一気に赤くなった

「あ…、私の事は
何て呼んでもらってもいいよ」

私は少し遠慮がちに言ってみる

"しつこい"とか"うざい"とか
思われちゃうかな…



「しい」


「…え?」

「しいって呼ぶ。短くて言いやすい」




…"しい"。

そんな呼び方をされた事、
人生で一度もない



恥ずかしさの無限ループ


でもそれと同時に、
なんとも言えない嬉しさが込み上げる


朔は相変わらず平然としているけれど




それにしても、朔は意外と話しやすい

"話しやすい"っていう程話してないけど

なんだかとても、居心地が良い

家族みたい…っていうのとは違うかな

きっとその理由の1つに、
彼の声の聴きやすさあるんだと思う


そうだ、明日この事を雪乃ちゃんに言おう


きっと共感してくれるよね



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