男ときどき女
ここから、“あの時はすいませんでした”から始まり、“いえいえ”の攻防戦。

しばらくして。


「あの、お名前は何ていうんですか?」

一時休戦。そういえばと思い、訊いた。

「あ、名前は吉永 さくら(よしなが さくら)って言います」

「へぇー、いい名前ですね。桜って大好きなんですよ」


頭に何かがよぎる。前にどこかで言ったような、そんな感覚。

急に心臓が踊り始めた。

「失礼ですけどお歳は?」

「十六ですけど?」

同い年?嘘だろ。

「俺、いや私も十六なんですよ」

危ない。気を抜いていた。

「じゃあ同じ高校生じゃないですか!」

急に向こうのテンションが上がった。俺は“そうですねー”と返した。


まさか同い年だったとはと思わず口が緩んだ。

「私より背が少し低かったんで中学生じゃないかと思ってました」

いきなり痛いところをつかれた。あぁそうですよ、俺はチビですよ。



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