男ときどき女
俺の親父は道場を経営していて、若い頃はちょっとは名が知れた人だったらしい。

物心ついた時には、自然と柔道が目の前にあった。可奈もずっと一緒にやっていて、学校が分かれた今もここにくれば嫌でも会うことになる。


俺は道場の入り口を開けた。そこそこの人数の門下生に親父が一人仁王立ちしている。

俺より遥かにでかい、そのDNAは俺のどこに受け継がれたんだ。

教えてくれ。なんであんたのその漢らしい顔は俺に継がれなかったかを。


そんなことを考えていると、親父が口を開いた。

「何やってんだユウ!早くこい!」

言われるがままに向かう俺。



生徒が帰っていった後、散々投げ飛ばされた俺は隅のほうで大の字になっていた。

親父は時間にうるさい。遅れるといつもこうなるのだ。しかし女には弱い。

実際、可奈は無傷で帰っている。


ひいきだ。

不満だけを道場に残して、家に上がった。


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