男ときどき女
柔らかい風がカーテンを揺らし、その間から光が差し込んでくる。

各教科の先生の言葉が全て同じに聞こえてきた。

要するにバレなきゃいいんだ。俺が女になることなんてもうな…くはないな。


俺は額に左手をあて考えこむ。やがて先生の声は完全に途切れてしまった。

その内違う声がきこえてくる。
「…転校するんだ」

サクラの声だ。切なそうに放たれた言葉は、簡単に俺の心をノックした。

「どこに?」

俺の精一杯の返事。すると、

「わかんない」

しばらく黙った後、俺は口を開く。

「…げんきでな」

もうサクラの顔を見ることはできなかった。

涙混じりに「うん」と答える彼女。



本当はこんなこと言うつもりじゃなかったのに、「好きだ」って伝えたかった。



こうして俺の初恋は終わりを告げた。


目が覚めると、ほんの少し強く拳が握られているのがわかった。





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