男ときどき女
ある日から仲良くなった男の子がいて、その子がいない時にイジメ代表みたいな男の子二人が絡んできたのよ。


それで、“嫌だ”って思った時、さっそうと現れたその子が助けてくれたのよ。背負い投げで」

「背負い投げで...」

ふと頭の中で何かがよぎる。

「そう。惚れちゃうでしょそんなの」

意外だった。今の彼女からは考えられない過去と、ほとんど見ず知らずの俺にその過去を話してくれたことが。


ただ俺は大変なことに気付き始めていた。


「でも...」

俺はその上から覆い被さるように訊いた。

「その子の...名前は？」

俺が急に真剣になるので、彼女は慌てて“えっと”と言った。


「確か、ユ..ユウだったかな」


予感は的中した。ちなみに名字を訊くと首を横に振った。


しばらくメガネを眺めて、“これいいんじゃない？”と勧めてみた。

すると彼女は、

「いや、こっちでしょ」


と、たわいもない会話で店に来る前の状態に戻った。




< 23 / 55 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop