男ときどき女
鳴り出した携帯電話。

隣にいた怜が“誰から?”と訊いた。


「さっき話した子から」


「マジで!?」


乗客の迷惑にならない程度に興奮する怜。


「…もしもし」


「サクラ?今度の日曜また会わない?会いたいって人がいるんだ」


「今度の日曜?」

聞き耳をたてていた怜は、体で“俺行く”と表現した。


「いいよ。こっちにもユイに会いたがっている人がいるみたいだし」

「え?」
一瞬背筋に悪寒が走った。

アイツがニヤッと笑ったあの日のように。


それから待ち合わせ場所と時間を決め、電話を切った。



誰だろ?俺に会いたい人なんて。


頭に浮かんだ人物のことは考えまいと、どっかに封印した。


いつのまにか隣で寝ている可奈を「おい」と頬をペチッと叩いて起こす。

「今何時?」

寝ぼけた様子で俺に話しかける。


俺は時間を言うと、さっさと部屋から追い出した。


帰るとき、「お邪魔でしたー」と言って報告も聞かずを去っていった。



その後、「どうなったの!?」と電話がかかってきたのは言うまでない。





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