男ときどき女
二人の内一人が「ここいかない?」と、女物の服がズラリと並ぶ店を指差した。


冗談じゃない。と首を横に振ったが、襟をしっかり掴まれてご入店した。



「試着していいですか?」

俺は女性店員を招き、男二人を排除した。

全く、男三人で何デート気分に浸ってるんだか。さっさと逃げよう。


俺は着替えたフリをして、店員にサイズが大きいと小さいのを持ってこさせようとした。

店員の「少しお待ちください」と、視線が服の方に向いて数秒後、俺はしゃがんで服の列にまぎれた。


待っていた二人がこっちの異変に気付く、近づいてくるのと同時に逆方向から一目散に走りぬけた。

この時ほど自分の身長が低くて助かったと思ったことはないだろう。


自動ドアの開く速度がえらく遅く見えた。




外に出る。人ごみに隠れればいいのに、俺は必死で逃げていた。


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