男ときどき女
その頃の俺。

「やっべー!今の怜だよな?なんでここにいるんだ?」

声もちゃんと高くしたし大丈夫だろう。多分。

それにしてもだいぶ遠くまで来たなぁ。足はガタついて、汗がでてくる。

十字路が見えた。少し休もうと思いスピードを緩めた時、同じ速度で走ってきた人と思いっきりぶつかってしまった。


二人ともしりもちをつく形になった。

「あの...ごめんなさい。考え事してて」

優しい女性の声だ。生まれてきた赤ん坊を包むような...そんな声だった。

「いえ、こちらこそ」

と、言った直後にパキっという音が聞こえた。嫌な予感。

右足を見たらしっかりとメガネを踏みしめている。

「あ...」

「え...?」

一瞬で冷や汗が出た。

「ご、ごめんなさい!」

俺は深く頭を下げた。

「いえ、普段使ってないほうのメガネなんで気にしないで下さい」

そう言うと、尻を軽くはたいて立ち上がった。





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