爆弾☆トリップ~平安絵巻・安倍晴明は俺様だった!?~

「お父さん…」

「すまんな。もっと、いい所の娘にでも産まれていたら…ほら、あの遊馬翔琉(あすま・かける)のように、世界的に有名なマジシャンで、豪邸に住めるような身分だったら…こんなことしか残せない自分が情けないよ。」


潤んだ瞳をさせながら、テレビに映っていたマジックショーを指差した。


「でも、お金があっても、この人、数年前に一人息子を事故で亡くしているんでしょ?」


興行で行ったどこかの国で、誘拐されて殺されちゃったとか。


当時、大きなニュースになってたから良く覚えている。


「そうだな。人の人生なんて、お金じゃないな。だからこそ、お前には心を大事にして欲しい…こんな事しか言えない、ふがいない父親だな。」


哀しそうに笑った。


その悲しそうな顔が。


良心を鋭い刃物のように突き刺した。


「分かった…2人には、1日ずらしてもらうね?」


ニッコリと笑って。


哀しそうにほほ笑むお父さんの顔を見た。


「店番さえしていてくれればいい。どうせ、客なんかそんなに来ないんだから。」

「分かった。」


お父さんの手をギュッと握ると、小さくうなずいた。


「頼むよ。」


お父さんも、ギュッと手をにぎり返した。


「じゃあ、2人にメールしてくるね。」


そう言って立ち上がると、2階の部屋に向かった。


「ねえ、パパってばあんな適当なこと言って。」


キッチンで洗い物をしていたお母さんが、ソファに座っているお父さんに声をかけた。

< 6 / 20 >

この作品をシェア

pagetop