爆弾☆トリップ~平安絵巻・安倍晴明は俺様だった!?~
「お父さん…」
「すまんな。もっと、いい所の娘にでも産まれていたら…ほら、あの遊馬翔琉(あすま・かける)のように、世界的に有名なマジシャンで、豪邸に住めるような身分だったら…こんなことしか残せない自分が情けないよ。」
潤んだ瞳をさせながら、テレビに映っていたマジックショーを指差した。
「でも、お金があっても、この人、数年前に一人息子を事故で亡くしているんでしょ?」
興行で行ったどこかの国で、誘拐されて殺されちゃったとか。
当時、大きなニュースになってたから良く覚えている。
「そうだな。人の人生なんて、お金じゃないな。だからこそ、お前には心を大事にして欲しい…こんな事しか言えない、ふがいない父親だな。」
哀しそうに笑った。
その悲しそうな顔が。
良心を鋭い刃物のように突き刺した。
「分かった…2人には、1日ずらしてもらうね?」
ニッコリと笑って。
哀しそうにほほ笑むお父さんの顔を見た。
「店番さえしていてくれればいい。どうせ、客なんかそんなに来ないんだから。」
「分かった。」
お父さんの手をギュッと握ると、小さくうなずいた。
「頼むよ。」
お父さんも、ギュッと手をにぎり返した。
「じゃあ、2人にメールしてくるね。」
そう言って立ち上がると、2階の部屋に向かった。
「ねえ、パパってばあんな適当なこと言って。」
キッチンで洗い物をしていたお母さんが、ソファに座っているお父さんに声をかけた。