書架の森で
真っ赤になりながら学校へ走り、教室に入ると……あたしの机に、西川が腰かけていた。
彼の手にある本を見て、青ざめた。
絶対からかわれる。
彼はふぅっと、振り返った。
色素の薄い髪が、差しこむ光で、飴色に透けていた。
「これ、お前の?」
いつもより柔らかい表情で、尋ねられた。
下手な言い逃れをしても、だめだろう。
あたしは、観念して頷いた。
「読む奴が近くにいるとは思わなかった。俺も好きなんだ」
嬉しそうに笑って、本を返してくれた。
すぅっと染みこむように、彼の笑顔が浸透してきた。